株式会社アンドゲート 代表取締役 田村謙介さん

株式会社アンドゲート 代表取締役 田村謙介

慶應義塾大学大学院修了。武蔵野美術大学卒業。学生時代からITエンジニアとして活動を始め、2017年に株式会社アンドゲートを設立。エンジニア人生で培った泥臭さとテクノロジー、そして学術に基づいた確かな方法論を武器に、数々の事業開発支援を行う。「左脳」によって社会や事業が抱える課題を構造化し、「右脳」によって起業家や事業責任者の想いを具現化する。人の想いが乗った事業を創出することをミッションに掲げている。


今回は、そんな挑戦し続ける田村さんにインタビューしてまいります!

(インタビュアー:イオリ)


IT業界の「多重下請け」と「PM不足」に挑む、アンドゲートの泥臭くも確かな”方法論”。


Q1. 事業を通じて、どのような社会貢献や社会課題の解決に取り組んでいますか?

私たちが向き合っているのは、IT業界における「多重下請け構造」と、それに伴う「PM(プロジェクトマネージャー)不足によるプロジェクトの失敗」という根深い課題です。

現在のIT業界では、元請けから下請け、孫請けへと業務が流れる中で、中間マージンや管理費として多くの費用が搾取されています。その結果、発注者は支払った金額に見合う価値を受け取れず、逆に現場の作業者は受け取る金額以上の過度な期待値を求められてしまうという歪みが生じています。

この構造的な無理が祟り、プロジェクトが破綻し、最終的に事業そのものが失敗に終わってしまうケースが後を絶ちません。私たちはこの悪循環を断ち切り、本来あるべき健全なIT開発の姿を取り戻すことを目指しています。


Q2. 解決を目指す社会課題に対して、現在の日本が置かれているリアルな現状を教えてください。

IT化やDX、AIの活用が進むべきであることは誰もが理解していますが、現場の現状は非常に深刻です。

① 人材育成のジレンマとAIの影響

高度なIT人材の育成には、いまだ再現性のある教育環境が整っていません。さらに昨今では、AIの台頭によってジュニア層(若手)が泥臭く経験を積む機会が失われつつあります。短期的な開発効率を重視するあまり、長期的な人材育成ができないというジレンマに直面しています。

② 資本主義的な格差の拡大

IT人材の高価格化が進んだ結果、潤沢な資金を持つエンタープライズ企業(大企業)以外は優秀な人材を確保できない状態になりつつあります。一方で、中小企業をターゲットにしたビジネスモデルは、グロース市場の低迷も相まって成長が鈍化しており、経済的な格差がそのままIT格差へと繋がっています。

③ 横行する「多重下請け」の生々しい実態

公正取引委員会の調査(2022年6月)では、ソフトウェア業界において買いたたき、不当な減額、支払遅延、理不尽なやり直し、中抜きが横行している実態が明らかになりました。「エンドユーザーからの値引き要請を理由に価格を一律20〜30%カットされた」「元請けの業績悪化の煽りを受け、資本関係のない協力会社の契約単価が一律10%カットされた」といった、現場の生々しい声が報告されています。

④ 10年間上がらない「プロジェクト成功率」

日経コンピュータの調査によると、スケジュール・コスト・満足度の3条件を満たすITプロジェクトの「成功率」は、2018年時点で52.8%(失敗率47.2%)に留まります。驚くべきことに、この成功率は10年前からさっぱり上がっていません。

さらにJUAS(日本情報システム・ユーザー協会)の2023年の調査でも、予定工期を遵守できたプロジェクトの割合は減少または横ばい傾向にあり、経営改革やDXに真に貢献できているIT組織はほんのわずかという厳しい現実があります。

⑤ 2030年に最大79万人が不足する「PM不足」と経済損失

経済産業省の予測では、2030年には最大で約79万人ものIT人材が不足するとされています。特にプロジェクトマネージャー(PM)やデータサイエンティストの需要拡大は確実です。IPA(情報処理推進機構)の「DX白書2023」でも、日本企業におけるPMやビジネスデザイナーの深刻な不足感が浮き彫りになっています。

さらに、レガシーシステム(老朽化したシステム)が半分以上残っている割合は、米国の22.8%に対し日本は41.2%と高く、DXの成果創出でも米国に大きく水をあけられています。

経済産業省の「2025年の崖」レポートや2025年5月の最新レポートでも指摘されている通り、この課題を克服できなければ、システムの維持管理費が高額化してIT予算の9割以上を占める「技術的負債」となり、年間最大12兆円の経済損失が生じるリスクを抱えています。


Q3. その現状を打破するために、アンドゲートでは具体的にどのような行動をされていますか?

私たちは、以下の3つのアプローチを軸に、現場から業界を変えるための実践を行っています。

1. エンタープライズ企業へのコンサルティング・実行支援

大企業をはじめとするクライアントの足元に入り込み、課題の構造化から実際のプロジェクト完遂まで、泥臭く並走する実行型の支援を行っています。

2. PM活動の自動化プラットフォーム「PRIMIS」の開発属人化しがちなPM業務をテクノロジーによって効率化・自動化し、プロジェクトの失敗確率を下げるためのプロダクト開発に挑戦しています。

3. プロジェクト方法論を広める広報活動

私たちが培ってきたプロジェクトマネジメントの手法や思想をブラックボックスにせず、Webサイト「THE METHODS」でのメソッド公開や、YouTubeチャンネル「THE METHODS | ANDGATE」を通じて社会へ広く発信し、業界全体の底上げを図っています。


Q4. 課題解決に向けて、読者や社会が今すぐできるアクションを教えてください。

ITの現場に関わる一人ひとりの意識や行動が変わることで、この巨大な課題を解決する一歩になります。ぜひ、以下の5つのアクションを意識してみてください。

・「自分が今、何次請けにいるか」を把握する

発注元から自分の手元に届くまでに、何社の中間業者が入っているかを意識してください。これを知るだけでも、業界構造への解像度が劇的に上がります。

・PMスキル(PMBOK、PMP、SCRUM等)を意識的に学ぶ

コードを書けるエンジニアは多いですが、要件定義と進捗管理まで徹底できる人は圧倒的に希少です。このスキルを身につければ、市場価値は跳ね上がります。

・「人月単価」ではなく「成果」で評価する契約に切り替える

「何人、何時間動いたか」ではなく、「どんな成果物(価値)を生み出したか」で評価する契約設計へシフトしていくことが、中抜きや買い叩きを防ぐ鍵になります。

・要件定義に時間を惜しまない

発注側が要件を詰めきれていないことこそが、下流のすべてのコストを膨らませる元凶です。最初の「合意形成」に徹底的に時間を投資してください。

・学生・若手は、早い段階から「PM」というキャリアに触れる

日本では圧倒的に不足しており、かつ社会的インパクトも年収も非常に高い魅力的なキャリアです。エンジニアの先にある選択肢として、ぜひ若い頃から目指してほしいと思います。


田村さん、貴重なお話を聞かせてくださりありがとうございました!

(インタビュアー:イオリ)