一般社団法人CVWJAPAN 代表理事 野武 士さん
野武 士
一般社団法人CVWJAPAN 代表理事
略歴
自身が幼少期に複雑な家庭環境を経験し、さらに小学校低学年で障害を抱えたことをきっかけに、「同じ思いを子どもたちにさせたくない」という強い原体験を持つ。
これまで放課後等デイサービス、高齢者支援、精神障害者の訪問支援など、福祉の現場で幅広い実践を重ねてきた。
現在は制度に依存しきらない形で、親と子の再構築支援や子ども食堂、啓発活動を全国に向けて発信し、「家族の再生」と「児童虐待のない社会」の実現を目指している。
今回は、そんな挑戦し続ける野武さんにインタビューしてまいります!
(聞き手・文:光村紀勝)
「子どもを守るには、親も守らなければならない」
身銭を切って挑む、家族再生と児童虐待ゼロへの道
光村:事業内容について教えてください。
私たちが中心に取り組んでいるのは、児童虐待防止の活動です。
それに加えて、居場所事業や、ひとり親家庭、独居家庭など、家庭環境が複雑なご家庭への支援を行っています。
特に力を入れているのが、親と子の再構築支援です。児童養護施設で生活していた子どもが、再び親と暮らすことになった際、ただ戻すのではなく、第三者として間に入り、家庭が安定するまで伴走します。
親御さんが今すぐ子どもと一緒に暮らすのが難しい場合には、特性や状況を整理しながら、無理のない形を一緒に探っていきます。
本来、子どもにとって一番安全で必要な場所は、施設ではなく家庭です。
だからこそ、施設に頼らなくても、家族として地域の中で暮らしていける環境をつくりたいと考え、この活動を始めました。
光村:事業を通してどのような社会貢献・社会課題に取り組んでいますか?
長年現場に立つ中で強く感じているのは、ひとり親家庭で育つ子どもたちの中に、障害を抱えているケースが非常に多いということです。
そして、その子どもたちが将来、親を亡くした後にどう生きていくのかという課題は、必ず直面します。
日本の福祉は、児童福祉、高齢者福祉、障害福祉と分断されていますが、人の人生は本来一本につながっています。
18歳を迎えた途端に支援が切れてしまう仕組みではなく、子どもから高齢者まで切れ目なく支えられる仕組みが必要だと感じています。
そのため私は、年齢や障害の有無に関係なく、地域の中で人と人がつながり続けられる福祉の形を目指しています。
光村:その社会貢献・社会課題の実現に対しての社会の現状を教えてください。
現在の日本では、制度ごとに支援が細かく区切られています。
児童は児童、障害者は障害者、高齢者は高齢者と、それぞれ別の枠組みで支援が行われています。
また、寄付や社会貢献に対する考え方も、海外と比べると大きな差があります。
海外では寄付は文化として根付いていますが、日本では「自分にメリットがあるかどうか」が判断基準になりやすいと感じています。
その結果、本当に必要な現場ほど資金が集まらず、活動する側が持ち出しで支援を続けるという歪な構造が生まれています。
光村:その現状に対しての最大の障壁は何になりますか?
一番の障壁は、制度と資金の問題です。
例えば児童養護施設をつくろうとすると、莫大な資金や厳しい認可が必要になります。
また、私たちは一般社団法人の普通型法人であるため、寄付に税制優遇がありません。
そのため、寄付がほとんど集まらず、法人税や事業税はしっかり課税されます。
結果として、活動資金の大半は自腹です。
これは、社会貢献をする人ほど苦しくなる構造であり、持続可能とは言えないと感じています。
光村:その現状を打破するためにどのような行動をされていますか?
現在は、SNSや口コミを中心に、全国へ向けて活動を発信しています。
チラシやグッズの制作も自分たちで行い、少しずつ認知を広げてきました。
また、子どもたちに「稼ぐ力」を身につけてもらう取り組みも行っています。
障害のある中学生に、オレンジリボンやパープルリボンなどを制作してもらい、単価は低くても「自分の力でお金を生む経験」を積んでもらっています。
福祉は与えるだけではなく、自立につながる形であるべきだと考えています。
光村:誰もが社会貢献を考え、社会をより良くしていくには、どうすればよいとお考えですか?
社会貢献の価値を、お金だけで測らないことが大切だと思います。
私にとって最大の報酬は、子どもたちから「ありがとう」「また来てね」と言われることです。
食料支援を行うと、後日必ず子どもたちから手紙が届きます。
その言葉こそが、何よりの対価だと感じています。
社会貢献は、すぐにお金として返ってくるものではありません。
けれど、積み重ねていけば、必ず誰かが見てくれて、手を差し伸べてくれると信じています。
光村:これからの時代をつくる大学生や新社会人に向けて、メッセージをお願いします!
私が一番伝えたいのは、感謝の気持ちを忘れないでほしいということです。
どんな環境であっても、ここまで育ててくれた人がいます。
その人たちに「ありがとう」と伝えることは、絶対にしてほしいと思っています。
人は一人では生きていけません。
働くことも、学ぶことも、必ず誰かの支えがあります。
お金では買えない経験や、人の想いに触れることが、人生を豊かにします。
ありがとうとごめんなさいをきちんと伝えられる大人になってほしい。
それが、これから社会をつくっていく皆さんへの、私からのメッセージです。
野武さん、貴重なお話を聞かせてくださりありがとうございました!
(聞き手・文:光村紀勝)
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