株式会社Umimawari. 代表取締役 小栗 康弘さん
小栗 康弘
株式会社Umimawari. 代表取締役
大学卒業後、NECで自治体向けの公共営業を担当し、街づくりや地域産業の課題に触れる。その後、ITベンチャーでの経験や船会社での実務を重ね、海事の業界が抱える構造的な遅れに強い問題意識を持つようになる。海の国家資格である海事代理士を取得後、独立。船舶免許スクールの運営と海事法務の支援を軸に、海の産業のアップデートに挑戦している。
今回は、そんな挑戦し続ける小栗さんにインタビューしてまいります!
(聞き手・文:光村紀勝)
「海の常識を変えていく。」
業界の複雑さに向き合い、仕組みから整える理由
光村:事業内容について教えてください。
現在は二つの事業を中心に展開しています。一つは船舶免許スクールの運営です。分かり易く言うと自動車学校の船版ですが、国の登録を受けている数少ないスクールで、当社の講習は修了すれば最後の国家試験が免除されるというのが少し違います。そのぶん高い海の知識、操船技術をもつ講師がいる体制を維持することが必要で、参入障壁が非常に高い事業です。
もう一つは海事代理士としての法務支援です。行政書士に近い業務が多く、船舶免許の発行、船の登録、旅客船事業等の許可申請、釣り船や漁業者の手続きなど、海に関する幅広い法務領域を扱い、行政と事業者の間に入り、橋渡しをしています。現場経験と海事法知識、行政独特のルールを理解した上で書類作成をする能力が求められるため、専門性の高い仕事です。
光村:事業を通してどのような社会貢献や課題に取り組んでいますか?
海業界には、制度の古さ、IT化の遅れ、人材不足など、長年放置されてきた課題が多くあります。現場で働く人の中には、複雑な法制度を十分に理解できず、正しい手続きが出来ていないまま、事業を続けているケースもあります。
海事代理士として、法律と現場の間にある溝を埋め、安全性向上と効率化を進めることで、業界全体の改善につなげていきたいと考えています。
光村:その社会課題に関する現在の状況を教えてください。
海の業界は縦割りが強く、国の機関、自治体、漁業者、船会社など、関係者がそれぞれ別のルールのもとで動いています。横の連携が少ないため、お互いがどんなことをしているか理解しない中で、業務を進めており問題が起きても改善が発生しにくい構造になっています。
さらに、海の法律は何十年も前の規定が数多く残存していて、現代の実態と合わないことが課題を複雑にしています。
光村:その現状に対しての最大の障壁は何になりますか?
一番大きな壁は法制度そのものです。古い法律が改正されないまま残り、事故が起きるとさらに規制が追加されるため、制度が複雑に積み重なっています。その結果、現場の事業者が守るべきルールが分かりづらく難易度も高くなっており、海業界への参入、事業継続がどんどん難しくなっていて、悪循環を作り出しています。
ただ、繊細な法律を変えるには時間も労力もかかり、行政の担当者も本質的な改善を進めづらいのが現状です。
光村:その現状を打破するためにどのような行動をされていますか?
政治家や行政、自治体、漁師さん、船の事業者など、海の産業に関わるあらゆる立場の人とのつながりを生かし、必要な改善点を直接届ける活動を続けています。法律の大きな改正は難しくても、例外規定を設けたり、運用方法を調整したりすることで、現場に合った形へ近づけることは可能です。
また、縦に分断されている関係者同士をつなぎ、共通認識をつくりながら、安全性と合理性の両立を目指しています。
光村:誰もが社会貢献を考え、社会をより良くしていくにはどうすればよいでしょうか?
特別なことをしようとするのではなく、自分が本来好きだったことや、おもしろいと思える感覚を大切にすることが大事だと思います。仕事も環境次第で好き嫌いが変わるので、自分の興味や価値観を押し殺さずに働くことが、結果的に人や社会の役に立つ行動につながるのではと思っています。
また、個人的には、会社の外でも通用する力を意識して磨くことで、個人の価値が自然と広がり、社会への貢献の幅もそれに合わせて広がっていくのではと思います。
光村:これからの時代を生きる大学生や若い社会人に向けて、メッセージをお願いします。
いまは情報があふれ、何が正しいのか分かりにくい時代です。だからこそ、周りのキラキラした情報に振り回されず、自分の感覚や価値観を大切にしながら働くことが、長い目で見ると一番の強みになります。
最初からやりたいことが決まっていなくても全然問題ありません。私も社会人1年目の時にこんなことをしているなんて思っていませんでした。変化し続けていく社会だからこそ、自分が何にワクワクするのかを丁寧に拾いながら、一歩ずつ進んでいけば道は必ず開けていくのかと思っています。
小栗さん、貴重なお話を聞かせてくださり、ありがとうございました!
(聞き手・文:光村紀勝)
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