医療法人松徳会 松本クリニック 院長 松本 和隆さん

松本 和隆

2000年に藤田保健衛生大学を卒業され、三重大学病院などで研修を重ねた後、2007年には三重大学大学院で医学博士号を取得する。三重大学医学部附属病院 糖尿病・内分泌内科の副科長や病棟医長など医療人育成と診療両輪で実績を築き、2016年には松阪市で「松本クリニック」を開設。専門医として地域に根ざす診療を続ける一方、『おいしい糖尿病レシピ』著書の優秀賞受賞など、メディア出演や講演にも積極的に取り組まれている 。


今回は、そんな挑戦し続ける松本さんの魅力に迫ってまいります!

(聞き手・文:光村紀勝)


地域に根ざす医療の最前線──

糖尿病と向き合い続ける専門医に迫る


光村:事業内容について教えてください。

当院は内科一般に加え、2016年に糖尿病・内分泌内科を開設しました。松阪市のような地域で、患者さんの日常生活に寄り添う診療を行っており、専門医や管理栄養士とも連携し、食事・運動・投薬といった生活習慣病に対する包括的なアドバイスを提供しています。


光村:社会貢献・課題については?

糖尿病は日本人のおよそ6人に1人が罹患する国民病で、放置すると失明や腎不全など深刻な合併症を招きます。そうした合併症を一人でも減らすため、正確な知識の提供とともに、患者さんが健康寿命を延ばして人生を謳歌できるよう支援するのが当院の使命です。


光村:現状はどのようになっていますか?

糖尿病には生活習慣由来のものから先天的な1型まで幅広く存在します。日本では自己管理に難しさを感じる方が多く、特に子どもや若者には低血糖・注射・食事制限などによるストレスが大きな課題となっています。また家庭環境や社会構造も関連しており、砂糖飲料やコンビニ食への依存などが若年層の発症の一因ともなっています。


光村:最大の障壁は何でしょうか?

最大の障壁は、社会全体で「糖尿病=自己管理できていない」という偏見が根強い点です。診断されたことで保険加入が困難になる場合や、周囲から誤解され体調不良が注目されにくい状況があります。その結果、患者さんが病気を抱えること自体に抵抗を感じ、改善へ踏み出せないケースも多いと感じています。


光村:打破するためにどのような取り組みをされていますか?

私は患者自身が正しい知識を持ち、自分で自分をコントロールできるようになることが最も重要だと考えています。そのため、クリニックでは「糖尿病教室」を開催し、治療や生活改善に必要な知識を伝えています。例えば、実際の食事を用いた試食でカロリー感覚を養ったり、栄養士・理学療法士による指導を通じて、日常生活の中での運動や食事の選び方を実践的に学べるよう工夫しています。

また、地域の学校と連携し、検診で糖尿病の兆候が見られた子どもやその保護者、さらには学校の先生に向けた情報提供も行っています。子どもが突然低血糖に陥ったとき、周囲の大人が適切に対応できるよう、医療の知識を「社会の知識」に変える取り組みを継続しています。


光村:社会貢献を広めるには?

「情報だけでなく、実際に患者さんと向き合うこと」が不可欠だと思います。オンライン情報が氾濫する中、リアルな体験を通して社会的解像度を上げ、人々の理解を深めることが、病気を抱える人への真の支援につながると考えております。


光村:大学生・新社会人へのメッセージをお願いします!

これからの社会は、AIがどんどん台頭していく時代です。普通の能力だけでは通用せず、AIを“使える人材”でなければ、生き残るのは難しいでしょう。プログラミングができるだけではもう足りません。それをどう使うか判断し、使いこなす人間が求められます。

とはいえ、AIに全てを任せてしまっては、本質的な「考える力」が育ちません。情報を丸投げするのではなく、一度自分の頭で咀嚼して、試行錯誤することが大切です。

また、日本は閉鎖的な傾向があり、AIの活用をむしろ押さえ込むような動きすらあります。一方、UAEなど海外では、小学生の頃からAI教育が導入されている。10年後には、どちらが“使える人材”かは明らかです。

今の若者が立ち上がらなければ、このままでは「昔、日本という国があったね」と言われる時代が来てしまうかもしれません。そうならないためにも、自分の可能性を信じて、学び続け、社会の解像度を高めていってほしいと願っています。


松本さん、貴重なお話を聞かせてくださり、ありがとうございました!

(聞き手・文:光村 紀勝)