株式会社SystemYacht 代表取締役 佐々木 瑛介さん

佐々木 瑛介

現・公立小学校講師。大学時代より20校以上の学校現場での経験を経て、学校教育の閉鎖的な風土や情報不足に強い問題意識を抱く。閉鎖的な現状を更新すべく、教員免許を持つ人々が情報や実践を共有できるプラットフォーム「教職者専門プラットフォーム Ut,edu」を開発。教師同士、教師と社会をつなぐ新たなメディアの形を創造し、次世代の学校教育をより良くするため、施策を教育現場と民間の両面から構築する“実践者型”アントレプレナー。


今回は、そんな挑戦し続ける佐々木さんの魅力に迫ってまいります!

(聞き手・文:原田空宙)


「教師の"繋がり"を子どもたちに還元する」


原田:事業内容について教えてください

System Yachtでは、幼稚園から高校までの教師、大学教授、保育士、教職課程受講者を対象としたコミュニティプラットフォームを運営しています。簡単に言えば、“教師専門のSNS”のようなものです。

現場の教師が授業プランや教材、日々のつぶやき、研究会の情報などを投稿・閲覧できる双方向クラウドサービスで、教員免許を持っている方が対象です。

教育の知見って、それぞれの現場や教師個人には沢山あるのに他の地域や校種と共有される機会が少ない。だからこそ、先生たちの知見をそれぞれの教師がツールとして活用できるようにしたいと思い始めました。コミュニティプラットフォームですので、もちろん悩み相談なども可能です。教師自身の世界が広がっていくことは直接子ども達の世界を広げてあげることに繋がります。


原田:事業を通してどの様な社会貢献・社会課題に取り組んでいますか?

一番大きなテーマは「教師の孤立をなくすこと」です。教師って、すごく閉鎖的な環境で仕事をしていることが多いのです。しかも忙しいから、他の先生と本当に知りたい情報を交換する余裕が取れないことも多い。だからこそ、同じような悩みや工夫を持つ先生たちがつながれる場を作りたかった。そして、社会の側も教員の苦労や知恵にもっとアクセスできるようにする。結果的に、教育の質が底上げされて、子どもたちにも還元される。そういう循環を作るのが私の社会貢献だと思っています。


原田:その現状に対しての最大の障壁は何になりますか?

最大の障壁は、「最初の一歩のハードルが高すぎること」ですね。必要以上に気にしすぎている点も多いのですが…。学校の世界や教師の感覚って、変化に対してものすごく慎重なことが多いです。「前例がない」とか「保護者を気にする」とか「学校や校長の方針」などといって、いろんな理由をつけて挑戦する環境がないことも多い。でも、やはりやってみないと何も変わらない。「Ut,edu」はその“一歩目”を支えるための場所でもあります。自分と同じような地域で同じような学校リソースでこれができるならこんなことができるかも!と思わせてくれる先生方やそのプランが集まっています。安全に、気軽に、本音で話せる場所を提供することで、教師の挑戦の輪がより広がると信じています。


原田:その現状を打破するためにどの様な行動をされていますか?

とにかく、まずは自分で動いてみるようにしています。アプリの中の機能で言えば、UIやUXをシンプルにして簡単にプランなどを投稿できるようにすることはもちろん、イベントや研究会の情報もアプリ内で見られるようにしたり、授業プランのコンテストを行ったり、Ut,edu主催の研修会を企画したり…と多くの先生に使ってもらえるようにしています。現在は、大学の教育学部との連携や、学校連携、学校と企業の連携など沢山の人を巻き込んで、“開かれた教育コミュニティ”を作るための種まきを頑張っています。様々な立場の方々と繋がって話をすることが何よりも大切であり好きな時間です。


原田:誰もが社会貢献を考え、社会をより良くしていくには、どうすれば良いとお考えですか?

正直に言うと、「誰もが社会貢献を考えなくていい」と思っています。できる人がやればいい。ただ、やろうとしている人の足を引っ張ってはいけない。大きな貢献などできなくても見守ることだって貢献ですよね。とはいえ、できる人が多いことに越したことはないので、そういう意味でもアントレプレナーシップ教育に価値を感じます。あとは、その人の認知的な話になりますが、社会貢献ってもっと身近な小さなことでいいのです。交通状況を意識した運転とか、子ども達が遊んでいるのをほほえましく思うとかも立派な貢献。そういう小さな貢献を自然にできる社会の空気があると素敵ですよね。


原田:これからの時代をつくる大学生や若手社会人に向けて、メッセージをお願いします!

もがけるうちは、全力でもがいてください。僕自身、まだまだ“もがき中”なんですよ。でも、その時間が一番楽しい。選択肢がたくさんあって、どこに行くか自分で決められる。そういうフェーズって、実はめちゃくちゃ貴重ですよね。成功はあとでついてくる。だから今は、恥をかいてでも、動いてみてください。大丈夫、ちゃんと見てくれる人はいます。


佐々木さん、貴重なお話を聞かせてくださり、ありがとうございました!

(聞き手・文:原田空宙)